対策書の書き方(発生原因と調査結果)
⑦ 発生原因と調査結果
この2つの項目は一緒にしても差支えないかと考えます。
違いとしては、発生原因は単純明快な「原因」です。
うだうだ書かずに、「***がこの現象の発生した原因です。」と直接的な原因を一言で記述します。
(なぜなぜ分析で言えば、一つ目の「なぜ?」にあたる内容。)
そして、一行空けて、その結論に至った理由を調査結果として記述します。
(なぜなぜ分析を用いてまとめるのであれば、5個目から順に繰り上がってゆく様に。)
発生原因のポイントとして、実際その現象に至る要因は多々あるかと思いますが、一つだけに絞り込む事です。
客に対し全ての要因を検討した事をアピールする為、
「工程Aの条件AA外れの場合、工程Bの作業方法の間違い、工程Cの条件CC外れの場合で発生する可能性があります。しかし、工程Bと工程Cの確認結果異常は見られなかった為、工程Aでの問題と判断します。」
と消去法で書いてしまいそうになりますが、その必要はありません。
発生した工程と異状の内容を絞った形で記述しましょう。
不必要な情報は隠し、他の要因は再発した時の為にとっておきましょう。
また、少し知識のある客先であれば、他の取引先でも同じ現象でクレームを発行した事がある場合が多く、我々からの回答を事前に予想している事があります。
その様な場合であれば、実際の発生原因とは異なっていたとしても、客先が予想している通りの回答で作成して提出した方が、説明が楽になると思います。
■ 具体的な対策書の書き方
具体的な発生原因の書き方ですが、一番簡単なのは自分で「なぜなぜ分析」をやる事です。
客にやらされた場合は5回繰り返せとか、非常に面倒なものですが、自分で対策書を書くためであれば、楽にまとめる事が出来る優れものです。
例えば、「設計変更が入ったのに、設計変更前製品を出荷してしまいクレームが来た。」ケースを考えてみましょう。
先ずは「なぜなぜ分析」です。
1回目 | 何故設計変更前品を出荷したか? | ⇒ | 設計変更前の治工具を使用し生産してしまった為。 |
2回目 | 何故変更前治工具を使用したか? | ⇒ | 変更前治工具が製造ラインに置いてあった為。 |
3回目 | 何故製造ラインに置いてあったか? | ⇒ | 技術担当者が新旧治工具を差し替える手順になっていたが、新治工具をラインへ渡し、旧治工具を回収しなかった為。 |
4回目 | 何故旧治工具が回収されなかったか? | ⇒ | ラインリーダー不在であった為、ラインからの持ち出し許可が取れなかった為。 |
5回目 | 何故リーダーが戻ってから引き揚げられなかったか? | ⇒ | 変更後の治工具を渡しているので、技術担当者は完了と考えてしまった為。 |
6回目 | 何故完了と考えてしまったか? | ⇒ | 変更後治具が手元に無かったので、差し替え完了と判断してしまった為。 |
勢い余って6回も遡ってしまいましたが、どこかをまとめて5回にしてもOKです。
(5回目と6回目の内容はほぼ同じだから、まとめて良いでしょう。)
本当は、「治具への訂番の改定を忘れていた」とか、「生産時の変更点確認がされていなかったので気付かなかった」とか、複合的な要因は多々ありますが、その辺りには触れず一個に絞ります。
(但し、客から突っ込みが入る可能性がある内容は盛り込んだ方が無難です。)
このなぜなぜ分析の結果から、発生原因と調査結果は次のようになります。
発生原因:
「設計変更前の治工具がラインに置いてあった為、その治具を使用し加工してしまいました。」
(なぜなぜ分析の1番目の内容を記述します。)
調査結果:
※どの様に管理する事になっていたのか?
管理項目に無かったのか、管理項目にあるが守らなかったのか、管理項目にあるが間違える可能性があったのか。
このあたりを考えながら文章を作ります。
「設計変更時には、技術の担当者が設計変更後の治工具を持ちラインへ出向き、変更前の治工具と交換します。
今回はラインリーダーが不在であった為、変更前治工具をラインから回収する事ができませんでしたが、変更後の治工具をラインへ置いてきてしまいました。
この時点で技術部署には変更後の治工具が無かった事から、差し替え完了と判断してしまいました。
この為、製造ラインでは既存の旧治工具を使用した状態で生産を行ってしまいました。」
■ 文章の加筆修正を行う
この文章をドラフトとして記述後、客先からの突っ込みを想定します。
・製造ラインには、設計変更ロットが流れる情報は渡っていなかったのか?設計変更ロットがどのロットからか明確になっていなかったのか?
・なぜ回収されていなければならない変更前治工具が技術部署に無いのに、差し替え完了と判断したのか?だれが判断したのか。
・回収した時のチェックシートがあるべきだと思うが、準備していないのか?準備していたのなら、なぜそこで確認できなかったのか?
・なぜ差し替えなのに、変更後の治工具のみをラインへ置いてきたのか?
・なぜラインでは変更前と変更後の二つの治工具がある事に気付かないのか?もし気づいていたら、なぜ変更前治具を使用したのか。
細かい事から、クリティカルな指摘まで全て想定します。
そして、文章を修正(追記、削除、変更など)するか、文章は変更せず指摘された時に口頭で回答するか、メールで回答するかを決め、必要に応じて文章を修正します。
文章を修正する際にも、「管理項目に入っていたか?」「入っていたらなぜできなかったのか?」「そもそも管理項目に無かったのか?」を必ず意識して記述しましょう。
例えば次の通りです。
■ 現場へ設計変更ロットの情報を共有する仕組みがある場合
・何故設計変更ロットの情報が、現場まで伝わらなかったのか?
もしくは、
・現場は設計変更ロットの情報を受け取っていたのに、何故それを無視してしまったのか?
■ 現場へ設計変更ロットの情報を共有する仕組みが無い場合
・何故その様な仕組みが構築されていないのか?
・過去に提出した品質保証体系図には、変化点管理があるが、「情報共有の内容」は無いのか?
・変化点管理標準書の提出を要求される。
・(もし変化点管理があったとしたら)なぜ標準書にあるのに実施できないのか?
この様な内容を考慮しながら、客先の質問を先回りして考え抜き、対策書に盛り込みます。
■ コツは写真を利用する事
発生原因の説明には、写真を積極的に用いるようにしましょう。
設備のトラブルで発生した場合はトラぶった証拠写真、設定間違いのしやすい操作盤であれば操作盤の写真、異物が付着しているならその異物の写真など。
証拠写真があった方が理解しやすく説得力が増しますし、対策前後の比較としても使用する事ができます。
■ なぜなぜ分析
上にも出てきた「なぜなぜ分析」ですが、5回必ず繰り返せと客から言われると非常に苦痛なものです。
提出用の書類では、無理やりにも分解して5回分埋めますが、「3回でいいだろ!」といつも思います。
5回繰り返すと、大概の場合はシステム(仕組み)まで行き着きます。
システムを弄るのは大掛かりになりますので、そこまで掘り下げるのは本当に必要な時以外は避けた方が良いでしょう。
ちなみに、なぜなぜを5回繰り返して得た回答は真因とみなす事ができます。
この真因を取り除く事が真の対策と(一般的には)考えられます。
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2019/02/06